【サワダコラム】


みなさん、こんにちは!

ライコウの澤田です!!



久しぶりに【サワダコラム】を書かせていただきます。



3月から始まったディーゼル車対象のリコール作業。
対象台数は25車種11万台といった大規模なものとなっています。
リコール修理内容は車両のプログラムアップデートで修正プログラムをインストールするもので、その際に車両のコンピューター(ECU)に不具合が生じてディーラーでトラブルが発生しまくっている状況です。


なぜ、車両のコンピューター(ECU)に不具合が生じてディーラーでトラブルが発生しまくっているのか!?


そのことについて、仮説をたて、それに基づいて検証し、得られた結果の一部をご紹介いたします。



今回は、
ディーラーのプログラミング作業で
5つのコンピューター(ECU)が不動になる!?

という案件について。


ライコウにご来店いただいたことの無い車両ですが、ご相談を受けて問題解決を取り組ませていただいた案件です。


あるECUがディーラーでプログラミングしている途中に不具合を生じて5つのECUが不動になってしまった(;'∀')


不具合を生じたECUとは・・・BDC_BODYです。

BDC_BODYに不具合が生じて、TRSVC/PMA/EPS/SAS/KAFASの5つのECUが通信不能に・・・。




この状態になってしまうと、パワーステアリングが動作せずステアリング操作がメチャメチャ重くなります。
そのほかにバックカメラや駐車アシスタントやアクティブクルーズコントロールや歩行者警告の機能が動作しなくなり、車両には大量の警告メッセージが表示されます。

一時的に動作が復活することもありますが、すぐに動作しなくなります。


車両には多くのECUが搭載され、CANやFLEXRAYなどといった数種類の通信プロトコルにてECU間の通信を行ない、クルマが動いてくれます。

通信プロトコルという表現では堅苦しいので、【CAN】という表現で説明させていただきますね。

まず、疑ったのは【CAN】に異常があるのでは?と考えたのですが、不動になっている5つのECUは同一の【CAN】ではありません。また、通信不能となったECUと同一の【CAN】には正常動作しているECUが存在しています。

といったことから【CAN】は問題ないと結論付けます。


次は、診断機でディフェクトメモリーされている内容をチェックします。


すると、BDC_BODYにて
【KL15N_1グラウンドにショート】
というエラーが記録されていました。

ECUのほとんどは電源供給は常時電源(KL30)になっていて、エンジンを始動させるなどの動作によりBDC_BODYが起動信号を送り各ECUが起動するという仕組みになっています。

KL15N_1とは各ECUを起動させるための信号です。



各ECUを起動させるための信号にエラーが記録されていますので、配線図を見ながらチェックしてみますと、TRSVC/PMA/EPS/SAS/KAFASの5つのECUすべてがBDC_BODYから発するKL15N_1の信号で起動していることが判明しました!!



KL15N_1はBDC_BODYのA258*3B PIN20から、グローブボックス奥のヒューズBOXまで配線されています。



BDC_BODYからKL15N_1にて起動信号を送ると、ヒューズBOXに付いてるKL15N_1用のリレーが作動し、各ECUが起動します。



ココが今回の不具合のポイントだと決めて、診断機を活用したりしてKL15N_1の現状を調べていきます。

すると、KL15N_1は信号を発しているものの動作が非常に不安定。
電圧が瞬間的に落ちる現象が確認されました。


KL15N_1は信号が不安定になってしまっている原因の追究を行ない、そして原因を発見っ!



BDC_BODY A258*3B PIN20からのKL15N_1起動信号線にドライブレコーダーや地デジチューナーなどのアクセサリー電源が接続されていることが原因でした。

接続されれていた社外品のアクセサリー電源をKL15N_1起動信号線から取り除くと無事復活っ!

5つのECUが安定して動作するようになりトラブル解決です(^^)/


今回は無事トラブル解決できましたが、この現象を放置して時間が経過するとBDC_BODYの交換が必要になります。

それは、BDC_BODYは不具合が起こった回数をカウントしています。
ある一定数のカウントが行なわれるとBDC_BODYの交換となるため、いち早く対処する必要があります。


ということでトラブルは解決しましたが、

本題はここからです!


★その1
ご来店いただいたお客様へお話しする機会がありますが、私は
診断機の現在のバージョンにバグがあるのでは?
と考えています。


なぜ診断機のバージョンにバグがあると考えているか。
もう数年前の話になりますが、ライコウが過去に所有してたF56 COOPERSを自社でプログラミングした時のことです。

プログラミングしてたら内蔵電源モジュール(Z11)が飛んでしまいました(;'∀')



しかも2回(笑)

プログラミングを実施した際の診断機のバージョンは2回とも同じです。
自社でプログラミングすると何かしら壊れてしまうかも?ってトラウマになってしまいました(笑)

ところがその後、診断機のバージョンを上げて再び自社でプログラミングをする機会が数回ありましたが、全く問題なくプログラミングが完了。

しかも診断機のバージョンは、それぞれ違うバージョンでプログラミングを実施しましたが全く問題なかったんです。

ってことは、内蔵電源モジュール(Z11)が飛んでしまった時のバージョンにバグがあったのでは?と思えて仕方ありません。
そんな経験をしていますので、プログラムのバージョンによってはバグがあるかもしれないと常に思い続けてます。

内蔵電源モジュール(Z11)が飛んでしまったプログラミングの時、問題無く完了できたプログラミングの時、いずれもメーカーオプション後付装着や社外電装パーツを多数装着していて、コーディングもかなりやっている状態で同一車両という条件下での自社プログラミングの経験です。


今回のトラブルは今年3月から頻発している現象。
したがって2月までは聞いたことがありません。

診断機のバージョンですが、ここ数年の状況は、毎月小さなバージョンアップが行なわれ、3月・7月・11月に大きくバージョンアップされてます。

3月からのバージョンに何らかの不具合があるのではと考えているのは私だけでは無いようで、最近はバグなんじゃないの?といった声を耳にする機会が増えてます。
それもそのはずで、まったくのノーマルな車両でもディーラーでプログラミングしてECU不具合のトラブルが出まくってるのが現状なのです。


診断機に搭載されている3月からのバージョンのバグという仮説を立証するためにここ2ヶ月は、仮説を立てて、それに基づいて検証し、結果を確認してを繰り返し行なってます。
そのおかげで、いろんな検証結果と情報を入手出来ていますよ。
その内容は、積み上げた検証結果という証拠でもって追々紹介させていただきますね。


★その2
社外品のアクセサリー電源を
なぜBDC_BODY A258*3B PIN20のKL15N_1起動信号線に接続している事案が多発
しているのか?



わたしにとって、かなり疑問でした。
目の前にはアクセサリー電源を取得できるヒューズBOXがあるのに、わざわざBDC_BODY A258*3B PIN20からアクセサリー電源を接続する理由がわかりませんでした。

これについても仮説を立てて調べてみることに・・・。

そして、理由は多分これだろうって確定できる資料を入手。



MINI純正アクセサリーのクリック&ドライブ取付説明書です。
入手したのは2014年の英語版取付説明書ですが、当時の日本語の取付説明書はどこかにあるはず。
取付説明書はメーカーが作っているもので、これを見てディーラーのメカニックやディーラーに出入りしている外注業者が取り付け作業を行ないます。



これを見ると
クリック&ドライブのアクセサリー電源を
BDC_BODY A258*3B PIN20へ接続する

と記載されています。



Terminal15とはKL15という意味でアクセサリー電源(ACC)を指しています。

クリック&ドライブのアクセサリー電源の接続は他の場所へ変更された取付説明書に現在は改訂されているようです。
KL15(アクセサリー電源)はBDC_BODY A258*3B PIN20へ接続するという純正アクセサリーの取付説明書を見て作業した経験があれば、その作業経験を活かしてBDC_BODY A258*3B PIN20で社外ドライブレコーダーや社外電装品のアクセサリー電源接続を行なってしまうのも仕方ないのでは・・・。

たまたま、MINI純正アクセサリーのクリック&ドライブ取付説明書を見つけましたが、他の純正アクセサリーの取付説明書でも同様の記載があるかもしれないですね。

このようなメーカーが作成した取付説明書が存在していたのであれば、プログラムでKL15N_1の信号制御を変えてはいけないと考えてしまうのですがいかがでしょうか?

だって取付説明書が改訂されるまでにはBDC_BODY A258*3B PIN20へ接続して商品を装着していた車両が多数存在するはず。
車両は特に不具合など無く動いてくれてたのに、リコール作業ということでわざわざディーラー入庫したら・・・。
3月以降のバージョンでプログラミングを行なわれてECU不具合のトラブルに巻き込まれているってことになりますよね。


メーカーやディーラーは社外品や社外コーディングによるトラブルだとしているようです。
しかし、じっくりと考えて調べて、自ら実践して得た情報で判断しますと
ECU不具合の原因を
社外品や社外コーディングへ責任転嫁

しているものと考えます。

少し前にいただいた情報でプログラミング失敗によるターミナル切替ができないことについてのメーカー配布の対処案があるのですが、それは的を得ない対処方法に思えるもので、真の原因が掴めていないことが容易に想像できてしまいます。


そもそも
アクセサリー電源をBDC_BODY A258*3B PIN20(KL15N_1)へ接続する取付説明書が存在するにもかかわらず
3月からのプログラムでKL15N_1の信号制御を変えしまっているのが原因なんじゃないでしょうか。