BMW M2 F87 ナビ再起動やライト異常などを同時発症。ISTA診断でK-CAN2通信障害を確認。原因特定と今後の調査方針を解説。

車両情報

車種BMW 2シリーズクーペ(F87) M2
初年度登録2016年
都道府県滋賀県

ヘッドユニット再起動やライト異常など、複数の不具合を同時に確認

滋賀県内からご来店いただいたBMW 2シリーズクーペ(F87)M2。
お客様からのご相談内容は以下の通りでした。

  • ナビ画面(ヘッドユニット)が突然再起動を繰り返す
  • バックカメラの映像が映らない
  • ウインカーがハイフラ状態になる
  • ヘッドライトが点灯しない
F87 ナビ再起動の不具合
バックカメラの映像が映らない
複数のECU間通信に問題が発生している
ヘッドライトが点灯しない

いずれも電装系に関連するトラブルであり、複数のECU間通信に問題が発生している可能性が高いと判断しました。
実際に現車を確認すると、すべての症状が再現。
単一の部品故障ではなく、車両全体の通信システム(K-CAN2ライン)に異常が発生している可能性が見えてきました。

ISTAによる診断で「K-CAN2通信障害」を確認

BMW専用診断機「ISTA」を使用して車両診断を実施。
その結果、K-CAN2ライン上の全てのECUが通信不能となっている状態が確認されました。

K-CAN2ライン上の全てのECUが通信不能
K-CAN2ライン全体の通信を遮断
K-CAN2ライン全体の通信を遮断
K-CAN2ライン全体の通信を遮断

ISTAのエラーログには、K-CAN2通信関連の多数のエラーが記録されており、次のような原因が考えられます。

  • いずれかのECUがショートや内部故障を起こし、通信を阻害している
  • K-CAN2のハーネスが物理的に損傷している
  • ゲートウェイモジュール(ZGM)の故障

いずれのケースもK-CAN2ライン全体の通信を遮断してしまう可能性があり、複数トラブルが同時発生するのが特徴です。

このような場合、単純に部品を交換するだけでは解決できず、根本原因を特定するための車両預かり調査が必要となります。

K-CAN2通信障害とは?──BMWの車両通信構造を解説

BMWやMINIの車両は、多数のECU(電子制御ユニット)が搭載されており、それぞれがCAN通信(Controller Area Network)と呼ばれるネットワークで情報をやり取りしています。

主な通信系統は以下の通りです。

  • PT-CAN:パワートレイン(エンジン・トランスミッション関連)
  • K-CAN:車体制御(ライト、ワイパー、ウインカーなど)
  • MOST:オーディオやナビなどのマルチメディア系
  • FlexRay:高度な運転支援機能や制御系統

このうち、K-CAN2はライト制御やメーターパネル、ヘッドユニットなど多数のECUを繋ぐ重要なラインです。
ひとつのECUが不具合を起こすと、同一ライン上の他のECUすべてに影響が及ぶため、今回のように複数のトラブルが同時発症することがあります。

今後の対応方針とライコウでの診断体制

本日は現状確認と診断までを実施し、今後の修理対応についてお客様にご説明しました。
K-CAN2通信が正常に復旧すれば、ナビ再起動・カメラ映像不良・ライト不点灯・ハイフラなど、すべての症状が一気に解消する可能性があります。

このような通信系トラブルは、ディーラー診断機と同等の専用テスター(ISTA)を用い、ライコウ独自のノウハウで解析を進めます。
また、必要に応じてZGMや関連ハーネスの電圧・抵抗測定など、配線レベルでの原因究明も行ないます。

ライコウでは、BMW/MINIの通信システム構造を熟知したエンジニアが、

  • 再現性のある症状確認
  • エラーログの分析
  • 実測による原因特定
    を段階的に進め、無駄な部品交換を避けつつ根本修理を目指します。